令和6年度の税制改正大綱が発表されました。今回の改正の主な目的は、「低迷する経済からの脱却」と「設備や人への投資の後押し」です。具体的には、賃上げ税制の見直し、交際費の課税特例の拡充、所得税の定額減税など、さまざまな改正が行われる予定ですが、今回は法人税と所得税についてその主要な改正をご紹介いたします。
1. 法人税改正
(1)賃上げ税制の改正(減税・増税)(令和6年4月1日以後開始事業年度)
「賃上げ税制」とは、給与支給額を前年より増加させた場合に、法人税を一定額控除する減税制度です。令和6年度税制改正では、企業のさらなる賃上げを促進するため大幅見直しが行われます。
① 控除割合の見直し
今回の改正によって、賃上げ率が高くない企業の控除率を引き下げる一方で、従業員に対する「教育訓練」や「子育て支援」に積極的な企業に対しては、より多くの割合を控除できるよう変更されます。
具体的には、「中小企業」「中堅企業」「大企業」の区分に応じ、給与支給増加額の10%~45%を法人税額から控除することができるようになります。
(給与支給増加率に応じた法人税控除割合)
控除割合(法人税控除額=支給増加額×控除割合)
| 給与増加率 | 中小企業 | 中堅企業 (従業員2000人以下) |
大企業 |
| 1.5%以上 | 15%~30% 5年繰越可 |
適用なし | 適用なし |
| 2.5%以上 | 15%~45% 5年繰越可 |
適用なし | 適用なし |
| 3%以上 | 15%~45% 5年繰越可 |
10%~20% | 10%~20% |
| 4%以上 | 15%~45% 5年繰越可 |
10%~35% | 10%~25% |
| 5%以上 | 15%~45% 5年繰越可 |
10%~35% | 10%~30% |
| 7%以上 | 15%~45% 5年繰越可 |
10%~35% | 10%~35% |
② 控除額の繰越し
中小企業については、控除額を5年間繰り越せる制度が新設されます。これにより、仮に当期赤字により差引く法人税がない場合であっても、5年以内に黒字になった際に法人税額から控除することができるようになります。
(2)飲食交際費課税の単価引き上げ(減税)(令和6年4月1日以降支出)
現在一人あたり「5,000円以下」の少額飲食費については、交際費課税対象から除外することができましたが、令和6年4月より、一人あたり「10,000円以下」に引き上げられます。
これにより、原則として法人税の計算上一人あたり10,000円以下の飲食交際費は経費として認められることになります。
(3)外形標準課税の対象拡大(増税)
これまで資本金1億円超の企業に対しては、給与や家賃などの支払額に応じた「外形標準課税」が課されてきました。しかし、資本金を1億円以下に減資してこの課税を回避する事例が散見されるようになったため、対象範囲を拡大し、課税回避を防止する策が講じられます。
(4)イノベーションボックス税制の創設(減税)(令和7年4月1日以後開始事業年度)
「イノベーションボックス税制」は、国内の企業が特許権などの知的財産に対する投資を奨励するために今回新たに導入される制度です。今後は、知的財産の譲渡や貸し付けによって得た利益の30%を費用計上できるようになります。
すでに欧米では同様の税制が導入されており、課税を軽減することで国内の知的産業の成長を促すため日本でも導入されることになりました。
2. 所得税改正
(1)定額減税の実施(減税)(令和6年分以降)
最近の物価高に対する負担を緩和するため、所得税および住民税の定額減税が行われます。納税者本人(年収2000万円以下)と扶養家族に所得税3万円、住民税1万円の合計1人あたり4万円が減税されます。
| 税目 | 定額減税 |
| 所得税 | 「本人」+「扶養親族(配偶者を含む)」の人数 × 3万円 |
| 住民税 | 「本人」+「扶養親族(配偶者を含む)」の人数 × 1万円 |
原則として、給与所得者の場合、令和6年6月分の給与から、個人事業者の場合には、令和6年7月の予定納税額から減税がスタートします。
(2)扶養控除の縮小(増税)(令和8年分以降)
今回の改正により高校生年代の子供がいる世帯では、扶養控除額が縮小されます。しかし、子育て支援策により児童手当の支給が拡大されるため、すべての世帯で実質的な手取りは増加するように設計されています。
【児童手当】
| 0~2才 | 3才~小学生 | 中学生 | 高校生 | 19~22歳 | |
| 現行 | 1.5万円/月 | 1万円/月 第3子以降1.5万円 |
1万円/月 | なし | なし |
| (所得制限) | あり | あり | あり | ||
| 改正後 | 1.5万円/月 第3子以降3万円/月 |
1万円/月 第3子以降3万円/月 |
1万円/月 第3子以降3万円/月 |
1万円/月 第3子以降3万円/月 |
なし |
| (所得制限) | なし | なし | なし | なし |
【扶養控除】
| 0才~中学生 | 高校生 | 19~22歳 | |
| 現行 | 扶養控除なし | 所得税38万円 住民税33万円 |
所得税63万円 住民税45万円 |
| 改正後 | 扶養控除なし | 所得税25万円 住民税12万円 |
所得税63万円 住民税45万円 |
※赤字部分が改正
(3)住宅ローン控除の拡充(減税)(令和6年中の居住開始)
子育て支援を促進し、住宅の価格上昇に対応するため、40歳未満の子育て世帯と夫婦が借入れをして下表の住宅を取得した場合、住宅ローン控除額が拡充されます。
| 住宅の区分 | 借入限度額(現行) | 借入限度額(改正後) |
| 認定住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
(4)ストックオプション税制の優遇拡大(減税)(令和6年4月1日以降)
「ストックオプション」とは、企業が役員や従業員に対して低額の自社株購入権を与える制度です。株価が上昇するとその分実質的な報酬が増える仕組みのため、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保が期待されてきました。
今回の改正により、これまでのストックオプションにおける税制優遇がさらに拡充され、スタートアップ企業の年間権利行使価額の限度額は、最大で現行の1,200万円から3,600万円へ引き上げられます。優遇する対象も広げることで、より多くの企業の人材確保、資金調達の強化、事業の発展を促進します。
何が変わる? R6税制改正大綱
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