賃貸経営が軌道に乗ってくると、法人にしたほうがよいかというご相談が増えます。税率だけを見れば法人が有利になる水準はありますが、法人にすることで増える負担もあります。今回は判断の目安を整理します。
1. 税率で見た分岐点
個人の所得税は、もうけが増えるほど税率が上がる仕組みです。住民税10%と合わせると最高55%になります。表の「課税所得」は、収入から経費や各種の控除を引いたあとの、実際に税金がかかる部分の金額です。
所得税の税率と、住民税10%を合わせた負担は次のとおりです。
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税と合わせて |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 33% |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 43% |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 50% |
| 4,000万円超 | 45% | 55% |
一方、法人税は中小法人の場合、もうけのうち年800万円までの部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です(令和7年4月1日以後に開始する事業年度では、所得が年10億円を超える法人は15%の部分が17%になります)。これに地方税を加えた実際の負担率を実効税率といい、800万円以下でおよそ21〜23%、800万円超でおよそ33〜34%です。
税率だけを比べると、課税所得800万円あたりから検討の時期と考えてよいでしょう。ただし、今後の法人税対策をどう進めるかなど、目的によっては、これより少ない金額から法人化を考えたほうがよい場合もあります。
2. 法人にすると使える手段
・ 役員報酬で所得を分散できる:家族に給与を出せば、1人に集中させるより低い税率で済みます
・ 給与所得控除が使える:同じ金額を受け取っても、税金のかかる部分が小さくなります
・ 赤字を10年間繰り越せる:将来の黒字と相殺できます(個人の青色申告は3年)
・ 法人でなければ使えない制度がある:社宅、出張日当、生命保険など
・ 相続のときに分けやすい:物件そのものではなく株式の形で承継できます
3. 増える負担も必ず見ておく
・ 赤字でも税金がかかる:法人住民税の均等割といって、会社があるだけで最低でも年7万円程度かかります
・ 社会保険への加入義務が生じる:役員報酬を出せば、本人分と会社分の両方の負担が発生します
・ 決算と申告の手間と費用が重くなる:個人の確定申告より作業が増えます
・ 設立費用がかかる:株式会社でおよそ20万円から30万円
・ 物件を法人に移すとその時点で税金がかかる:譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税
特に最後の点は見落とされがちです。物件を法人に移すだけで、節税額の何年分にもなるお金が出ていくことがあります。すでに持っている物件は個人のまま、これから買う分だけ法人で、という選択が現実的な場合も少なくありません。
まとめ
法人化は、所得がいくらを超えたら、という一点では決まりません。今後の物件取得の予定、家族構成、相続をどうするか、社会保険の負担をどう見るか。これらを合わせて判断する必要があります。
数字は、物件数やご家族の状況によって大きく変わります。ご自身の場合の試算をご希望でしたら、アマヤ・パートナーズ税理士法人まで個別にご相談ください。
(参考:法人税法第66条、租税特別措置法第42条の3の2)
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