会社の資本金は、対外的な信用力を示すだけでなく、税務上の取扱いにも大きく影響します。増資によって資本金が一定のラインを超えると、消費税や法人税の優遇措置が使えなくなったり、均等割が上がったりすることがあります。実務上、特に意識すべきラインは「1,000万円」「3,000万円」「1億円」の3つです。今回はこの3つの「壁」について整理します。
1.3つの資本金のライン
(1) 1,000万円の壁 ― 消費税と均等割
新たに設立された法人は、原則として設立1期目・2期目は消費税の免税事業者です。
しかし、期首の資本金が1,000万円以上の場合は課税事業者となり、設立初年度から消費税の納税義務が発生します。設立時に資本金をいくらにするかは、消費税の観点からも重要な判断になります。
また、法人住民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円を超えると区分が上がります。標準税率ベースでは、1,000万円以下の場合は年間7万円ですが、1,000万円を超えると年間18万円になります。利益が出ていなくても毎年かかる固定コストですので、創業時や増資の際にはご注意ください。
(2) 3,000万円の壁 ― 設備投資の税額控除
資本金3,000万円を超えても、1億円以下であれば多くの中小企業向け税制は引き続き利用できます。ただし、設備投資に関する税制では3,000万円が重要な分かれ目になります。以下の表は、資本金が3,000万円を超えた場合に変わる主なポイントです。
資本金が3,000万円を超えると、中小企業投資促進税制では税額控除が選べなくなり、経営強化税制でも控除率が10%から7%に下がります。高額な設備投資を予定している場合は、増資のタイミングと設備の取得時期を合わせて確認しておくことが大切です。税額控除は法人税から直接差し引けるため、特別償却と比べて節税効果が大きいケースもあります。
(3) 1億円の壁 ― 最も影響が大きいライン
資本金が1億円を超えると、中小企業向けの主要な優遇税制の多くが対象外となります。1億円のラインは、税務上の影響が最も大きく、超えるかどうかで税負担が大きく変わります。特に影響が大きい制度は以下の通りです。
特に外形標準課税は、所得だけでなく付加価値額や資本金等の額にも課税されるため、赤字であっても税負担が発生します。人件費や賃借料が大きい会社、利益率が低い時期の会社では影響が大きくなります。令和6年度の税制改正では、資本金を1億円以下に減資した場合でも、一定の要件に該当すれば外形標準課税の対象となる見直しも行われています。
なお、資本金が1億円以下であっても、資本金5億円以上の大法人に支配されている場合などは、中小企業向け税制の対象外となることがあります。
2.まとめ
資金調達や信用力の向上のために増資を行うこともあると思いますが、資本金が増えることで、それまで利用できていた税制上の優遇措置が使えなくなる場合があります。会社の状況によっては、資本金ではなく資本準備金に組み入れることで壁を越えずに済むケースもあります。増資を検討される際には、「資本金がいくらになるか」だけでなく、「使えなくなる制度がないか」「増資のタイミングは適切か」という視点でも確認しておくことが大切です。
上記は制度の概要です。実際にはさらに細かな規定がございますので、増資・減資をご検討の際は、弊社担当者までお気軽にご相談ください。